高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第68回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告

    
       
□テーマ:「ワイドギャップパワー半導体の現状と今後」
□日 時: 令和4年9月6日(火)13:30~17:00
□形 式: 京都テルサ第二会議室 / Web(Zoom)


 今年度2回目のアナログ技術トレンドセミナは、自動車のEV化や再生可能エネルギー対応パワーコンディショナー等で、今後大きな展開が予想される「ワイドギャップパワー半導体の現状と今後」をテーマとして取り上げました。講演に際してノーベル賞受賞者で、GaNパワー半導体で世界的にご高名な天野教授に基調講演をお願いすると共に、量産が始まっているSiCパワー半導体や、次世代のパワー半導体と期待される酸化ガリウムパワー半導体の現状と今後について、この分野で先導的な活躍をされている企業3社の3名の講師の方々から活動をご紹介頂きました。
セミナーには75名以上の方々が参加の上、活発な議論、質疑応答を展開して頂きました。
以下講演の概要をまとめます。


◆講演:「ワイドギャップパワー半導体の社会実装に向けてのロードマップ」
     天野 浩 氏(名古屋大学 未来材料・システム研究所 教授)
 2043年に達成目標のカーボンニュートラルに向けて日本政府も脱炭素で経済・社会・産業構造を転換する為にGX実行推進担当相を新設し且つ新興企業育成を支援するスタートアップ担当相を設けている。この目標を達成する為には電気自動車の普及や再生可能エネルギーが増加してくるがこれらのエネルギーの損失を最小に抑え効率良く電力を制御する為にワイドギャップ半導体は不可欠である。SiCパワーデバイスが先頭を切って量産が開始されているが次世代の
GaNパワーデバイスはGaN on Siデバイスの研究は進んでいるがGaN on GaNデバイスで適用されるGaN基板ウエハーの研究開発はその難易度と高コストにより中々進んでいない。日本が最先端を走る低欠陥密度のGaN基板製造技術の実用化研究を一層進める事が期待されている。

◆講演:「パワーシステムへのパワーデバイスの影響を測る・予測する研究開発」
     中原 健 氏(ローム株式会社 研究開発センター センター長)
 ロームが積極的に進めているSiCパワーデバイスがSiパワーデバイス(IGBT)と比較して相当優位(低損失・高耐圧)な事を実際のデーターで示されていた。しかしSiCパワーデバイスを開発する上で既存のスパイスモデルでは上手くフィットせず独自のデバイスモデルを構築する事により電気特性や熱特性および放射ノイズ等を精密に予測する事が可能になった。これによりEVメーカー等に説得力のある説明が可能になり今までデバイスメーカー側からデバイスとしてのみのメリットの主張からEVメーカーを含めたセットメーカーでのメリット・リスクをデバイスメーカー側から提示する事が可能になりセットメーカーからの信頼を勝ち取る事が出来た。
◆講演:「SiCパワーデバイスの超高電圧機器への応用」
     中村 孝 氏(ネクスファイ・テクノロジー株式会社 代表取締役社長)
 2021年に設立されたネクスファイ・テクノロジー社の事業内容としてSiCパワーデバイスを応用した革新的な高電圧機器開発・生産の説明をされていた。Siパワーデバイスと比較して圧倒的に低損失・高効率なSiCパワーデバイスを活用してSiでは6.5kV以上は不可能だがまだ課題はあるものの13kV10AのSiC高電圧スイッチングモジュールや素子の直列・並列接続により24kVの高電圧・大電流モジュールの開発及び最先端冷却技術を適用した出力密度の向上・小型化モジュールについて説明があり又既に京都府立医大に設置されているBNTC向け300kV電源の紹介があった。
 今後もSiCパワーデバイス応用技術により①小型化②低コスト化③高信頼性化を実現した新商品を開発し市場に投入すると抱負を語られていた。
◆講演:「酸化ガリウム -技術の現状と今後のビジネス展開-」
     倉又 朗人 氏(株式会社ノベルクリスタルテクノロジー 代表取締役社長)
 2015年に設立されたノベルクリスタルテクノロジー社はパワーデバイス材料としてβ-Ga2O3基板・エピウエハーの開発・製造・販売を事業としており将来的にはβ-Ga2O3のデバイス開発・販売までを視野にいれている。ワイドギャップパワー半導体としてはSiCパワーデバイスやGaNパワーデバイスが先行しているがβ-Ga2O3はSiCやGaNより低損失で製造が容易で且つ低コストな新材料として注目を集めている。溶液成長法でバルクβ-Ga2O3インゴットを引き上げる為昇華法のSiCインゴット製法に比べて100倍以上の成長速度が可能になり且つSiCより軟らかいので加工の難易度が低く低コストでの製造が可能になる。現在はキラー欠陥密度を大幅に低減した100mm径のウエハーを開発済だが将来的には150mm径、200mm径での製造を目指している。
一方デバイス開発では2022年にSBDを開発して半導体・オブ・ザ・イヤー2022を受賞しており現在はSiCを凌駕する高性能・高耐圧なMOS-FETの開発に注力している。2030年にはEV市場でのシェア獲得を目標にしている。

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