高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第70回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告

     
    
       
□テーマ:「二次電池システムの現状と今後の動向」
□日 時: 令和5年2月10日(金)14:00~17:00
□形 式: 京都テルサ/Web(Zoom)


 現在、クリーンエネルギーやEV等の二次電池をネットワークで繋ぎ、EMSを使って電力の安定供給を図る分散型電源供給システムの開発・実用化 に注目が集まっている。その実用化の鍵を握るのが二次電池システムで、二次電池とBMS(バッテリー・マネージメント・システム)から構成される。今回はこの事業分野で先端的な取り組みをされている3名の方に、その最新情報と将来展望についてご講演を頂いた。
 会場参加者と合わせて38名の参加をいただき、活発な質擬、応答をいただいた。


◆基調講演:「二次電池システムの現状と今後の課題」
     有馬 理仁 氏(大和製罐株式会社 技術管理部 エネルギーソリューション開発室)
 BMSでの監視項目は、電圧、電流、温度であり、マネジメント項目は、①過充電防止、②過放電星、③過電流防止、④異常高温防止、⑤異常低温防止である。バッテリーシステムは、まず単電池を並列化し、それをモジュールに組み上げると共にその過程で計測ユニットを統合化する。その後BMSを搭載し蓄電システム(電池パック)となる。BMSによる電池の劣化診断法には、交流インピーダンス法、過渡応答法等、様々な手法がある。
 2020年代後半に、Liイオン電池に使用されるLi、Ni、Cuの需給が逼迫すると予想されており、EVで寿命の終えたLiイオン電池を、劣化診断して定置用蓄電システムとしてリユースする動きが活発になっている。
◆講演:「二次電池の現状と今後の動向」
     福井 正博 氏(立命館大学 理工学部 電子情報工学科 教授)
 二次電池の世界市場はほぼ中国、韓国メーカで占められており、10位以内なのは、わずかにパナソニックだけで、4位で残っている。EVに搭載される蓄電池は、普通車で350V、30~50kWH程度。HEVには、マイルド、ストロング、プラグイン等の方式があるが、ストロング(普通車)で、200V、1kWH、プラグインで、350V、8kWH程度。日本ではHVは50%程普及しているが、EVやPHEVは3%程度。また急速充電器も、規制が厳しく、欧州、中国、韓国に比べ、大変普及が遅れている。
 二次電池の今後の動向として、Liの不足が顕在化しており、ポストLiとして、NaやMgの検討が進められている。またテスラ向け大容量円筒形型Liイオン電池(パナソニック)「4680」対CATLのセルを電池パックに敷き詰めるCTP(Cell to Pack)技術による「麒麟電池」の開発競争が、激しくなっている。
◆講演:「BMSの現状と今後の展開」
     河邉 章 氏 (ヌヴォトン テクノロジージャパン(NTCJ)株式会社 
               バッテリー・アナログソリューションビジネスユニット
               マーケティング部 マーケティング四課 課長)
 NTCJは、2014年にパナソニックの半導体設計部門を、ヌヴォトン(台湾)が買収して設立された。2010年以降、バッテリー監視IC(BMIC)を中心にバッテリーソリューション事業を展開している。本セミナでは、BMICの実際について講演された。
 BMSは、主にBMICとマイコン(BMU)とソフトウエアで構成され、電池が危険な状態を検出し、フェールセーフを実行する。例えば、発熱や発火に繋がる過充電や、劣化が進む過放電を防止したり、充電量を測定・計算・予測し上位システムに伝えたり、セルバランス(均等化)を実施して電池容量の維持を図る。
 同社のBMICはこれまでカーOEM9社で採用されている。また、2020年には汎用BMSモジュールの販売を開始した。今後のBMSでは、特にLiイオン電池のリユースやリースシェアリング時のバッテリー劣化診断を、手軽に行える機能が必要と考えている。  

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