高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第69回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告

    
       
□テーマ:「日台連携;世界を変えそうな台湾技術ベンチャー2」
□日 時: 令和4年11月29日(火)13:30~17:00
□形 式: Web(Zoom)


 HAB研はオープン・イノベーションと新産業創出の促進を目的とし、日本と台湾ベンチャー企業との連携活動を推進することは事業の一つの柱として位置づけられています。日台の連携活動は主としてセミナを開催することによって日台の有力企業/技術ベンチャーや技術ベンチャーのまつわる生態系などを紹介し、様々な戦略的パートナーシップの可能性を探る、などが挙げられます。
 昨年の日台連携セミナのテーマを引き継ぎ、今年もITRIやアジア経済研究所などの機関と連携し、著名な研究者や有力技術ベンチャーをお招きして講演していただきました。まず、台湾/東アジアの半導体・IT産業とスタートアップ・エコシステムの経済・産業・企業の研究で卓越な成果をあげられているアジア成長研究所研究部の岸本千佳司准教授に台湾のベンチャー(スタートアップ)を創出するエコシステムにについて解説していただき、そしてNTPC-AWS Joint Innovation Centerで育成され数々の大型起業コンテストで優勝した智慧貼紙股?有限公司(Smart Tag Inc.)創立者兼CEOの張焜傑氏にスマートタグ、大賀智聯網OHGA SMARTTHINGS CO., LTD)CEOの李正星氏に霧化器、博盛半導體股?有限公司Potens Semiconductor Corp. 日本支社長吉本慎輔氏にパワー半導体、それぞれの技術優位性や実証事例などを紹介していただきました。各講演後の質疑応答においては、日台ベンチャー創出エコシステムの比較や各社の経営実績やコア技術、海外進出の可能性などをめぐって活発な討論が行われました。


◆講演:「台湾のスタートアップ・エコシステム」
     岸本千佳司氏((公財)アジア成長研究所研究部准教授)
 本講演は、台湾のスタートアップを支えるエコシステムをアクター別に分け、「起業家/スタートアップ」セグメント内の小循環と、「起業家/ スタートアップ」-「支援アクター」間の大循環のそれぞれの発展度合いを分析しました。小循環に関しては、台湾スタートアップの活況や集中分野(ヘルステック等)といった特徴が明らかにされ、IPO企業や成熟スタートアップの連携・投資・買収が増えつつあるなどの発展・進化が見られますが、依然として未成熟な状態にあります。大循環に関しては、各支援アクターの活動も進化中です。例えば、台湾の大学/研究機関による理系人材の育成・産学連携は一定の実績を挙げており、成熟企業とスタートアップとの協力(CSE)は近年関心が高まっている一方、資金提供者として特に企業/CVCの存在感が大きく、その他支援アクター(アクセラレータ)も外資の参入など近年急増しています。総じて台湾のスタートアップにはエンジェルや早期段階向け投資家が不足、政府支援が必要などの課題が残りますが、ここ数年急速にエコシステムの形を成しさらなる発展可能性があると示唆しています。


◆講演:「スリム化した工場スマートアップグレートソリューションで痛みを伴わない工場のアップグレードを」
     張焜傑氏(智慧貼紙股有限公司Smart Tag Inc. 創立者兼CEO) 
 本講演は、工場のDXを実現するのに必要とされるデータ収集用のセンサーが高価で充足していないことから着想を得て、大量に提供できるAIoTスマートタグと、機械の状態をすばやくスクリーニングするためのソリューションを提案しました。稼動の仕組みとして、スマートタグは生産過程にある温度・湿度・振動のデータを収集した後、データはブルートゥースを介して近くのゲートウェイに送信され、最終的にネットワークを通じてフォグ・コンピュータ(Fog box)で減衰率に変換され、顧客は可視化された減衰率を観察することで機械の健康状態を把握できます。同社のスマートタグは独自のセラミック回路基板で製造され、熱伝導率やバーニングポイント、耐圧性において従来よりも数倍高く、簡単で短期間に導入できます。また、スクリーニング方法も従来と異なる独自の減衰率演算で実現し、データの急激な増加への対応やリアルタイムのデータ提供、AI学習による精度向上などの点で優れています。最後に、石油化学工場、半導体パッケージング工場などの5つの実装事例を通して、同社の技術の実用性とAIoTによる工場管理の方向性も示されました。

◆講演:「中小企業とベンチャー企業との協業経験の共有」
     李正星 氏 (大賀智聯網OHGA SMARTTHINGS CO., LTD CEO)
 本講演では同グループの事業や資源を活かしたベンチャー企業との協業経験を中心に、コア技術の光学技術の展開、同業種・異業種への展開事例を紹介していただきました。Ohga社は光学技術の赤外線センサーとEMSで培ったIoT ソリューションや、照明制御、メディカルデバイス、OEM/ODM技術等をベースにベンチャー企業にセンサー、コミュニケーション技術、リモートサービス、産業制御システム、IoTといったone-stop shopサービスだけでなく、調達システムやODM/EMSの製造サービス、市場機会へのアクセスも提供しています。グループは特に特殊な光学測定技術を使い(特許技術)、肉眼で見えない皮膚深層の状態を測定できるハードウェアからデータ分析までのソフトウェアを統合する、精度の高い非接触型の測定器の開発に注力しています。同社はまたベンチャーキャピタルファンドなどを活かし、例えばAI分野のデータ分析、XRソリューション、霧化器、バーチャルケアシステムなどの他業界のベンチャー企業と緊密な交流と協力を確立し、国内外の市場を共同で拡大していく実績を見せています。
◆講演:「用途別に特化した高効率、高周波、高集積化を実現する為の半導体技術ASEMM」
     吉本慎輔氏 (博盛半導體股有限公司Potens Semiconductor Corp.日本支社長)
 本講演では、2012年9月創業で、新竹に本社があり、パワー半導体関連製品の設計開発とその製品販売を行う、従業員55名、資本金:8億5千万円(NT$1.9億) 、売上高:2021年度57億円 のスタートアップのご紹介を頂きました。営業拠点所在地は、台北、日本、中国、韓国、ドイツと、グローバル展開中で、日本企業と事業連携に期待しています。また創業者、他の役員は、いずれもMOSパワー半導体での経験が豊富で、創業以来、台湾で多くの賞を受賞されています。
 同社は、台湾や米国のウエハー・ファウンドリーやアセンブリーハウスと連携して、製品を開発しています。主なパワー半導体製品は、650V Planar MOSFET、1500V Planner MOSFET、650V & 1200V SiC SBD、GaN HEMT, 1200V SiC and 1500V MOSFET等です。
 L(Leading)、D(Differentiation)、U(Unique)が、同社の経営スローガンで、特にASEMM(Application-Specific Enhanced Mode Module; 用途別に特化した高集積化、高周波、高効率化を 実現する半導体技術)を強みとしています。例えばEV向けのHalf-Bridge SiC Moduleや、650V GaN FET等です。


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