高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第66回 アナログ技術トレンドセミナ(HAB研セミナ)報告

       
□テーマ:「水素エネルギーの現状と今後の動向」
□日 時: 令和4年2月3日(木)14:00~17:00
□形 式: Web(Zoom)セミナ 


 今回のアナログ技術トレンドセミナでは温暖化対策の大きな柱である炭酸ガスを出さないカーボンニュートラルへの施策の上で、注目が集まっている水素エネルギーがテーマです。
 地球温暖化の状況は年々深刻さをましており、世界各国も温室効果ガスの大幅な削減が必要だという認識を共有しています。そのためには化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を図らなければなりませんが、再生可能エネルギーには、必要な時に、必要な場所で使うのが困難という欠点があり、それを補うために水素エネルギーの役割が期待されます。
 今回、この分野でご活躍の3名の方に水素エネルギーの現状と今後の動向についてお話をいただきました。 60名以上の参加をいただき、活発な質擬、応答もいただきました。

 以下、講演の概要をまとめます。


◆講演:「国内外の脱炭素化と水素社会への潮流」
     矢加部 久孝 氏 (東京ガス株式会社 執行役員 水素・カーボンマネジメント技術戦略部長)
 2021年のIPCC報告書にあるように温暖化は疑う余地がない、温暖化を抑えるには二酸化炭素の排出を実質ゼロにする必要がある。日本では2050年カーボンニュートラル実現を公約。脱炭素化に水素は再生可能エネルギーの間欠性、不安定さという欠点を補う役割を負うことができる。さらに可搬性を持ち、それ自身燃焼時にCO2を排出しない。水素は化石燃料から合成するか水の電気分解で作られる。その課題は製造コストと輸送コストである。欧州ではパイプライン構想もあるが日本では海外で水素製造、液化して海上輸送、日本で水素発電という構想もある。東京ガスの水素に関する取り組みとしては家庭用・業務用燃料電池の導入、水素ステーションの運用、水素製造装置の開発、ローカル水素ネットワーク(水素導管)の整備・運営を行う。またカーボンニュートラルメタンのサプライチェーン構築の事業化検討も行っている。最後に2050年のガス事業のイメージも説明されました。

◆講演:「水素エネルギーの現状とパナソニックにおける社会実装の取組み」
     加藤 玄道 氏 (パナソニック株式会社 スマートエネルギーシステム事業部 燃料電池戦略担当)
 日本では再生可能エネルギー電力の導入は立地的な条件もあって不利な状況である。また再生可能エネルギーだけでは安定電力の供給は難しく、何らかの調整電源が必要となる。パナソニックは創業者の思いによる「松下環境憲章」を制定、「環境宣言」を発信し現在も継続中。2030年自社事業に伴うCO2排出量実質ゼロ(2030年)、社会に対するCO2削減貢献の拡大を目標に挙げている。家電製品の省エネ化では2005年から2018年で平均年間消費電力を39%削減できた。また、家庭用燃料電池をはじめ創エネルギー商材を提供している。エネファームは家庭用としてガスから作った水素と空気中の酸素で電気と熱(お湯)を作って供給するもので、エネルギー効率が非常に高い。純水素型燃料電池の商品化も行っている。水素燃料電池は小規模でも高い発電効率が得られ、分散型電源として最適であるとともに発電時に温室効果ガスでもあるNOxを発生することもない。また太陽光発電に比べ面積効率が非常に高い。パナソニック草津工場にて燃料電池工場の使用電力を太陽光発電(PV)、蓄電池、水素燃料電池で賄う計画がある。(2022年稼働予定)今後の予定としては水素製造装置、水素発電装置、パワーグリッドを含めたグリーン電力の供給を実現していきたい。

◆講演:「国際液化水素サプライチェーン構築への取り組み」
     新道 憲二郎 氏 (川崎重工株式会社 水素戦略本部 プロジェクト総括部)
 川崎重工は脱酸素に不可欠な水素を「つくる」「はこぶ・ためる」「つかう」サプライチェーン全体の技術で貢献する。日本では水素関連協議会の設立が活発で、世界でも水素エネルギーの社会実装への戦略、ロードマップが策定されている。CO2フリー水素チェーンのコンセプトは、海外の未利用資源である褐炭や再生可能エネルギーから低コストで水素を製造、それを日本に海上輸送して貯蔵し発電などに利用するものである。日豪パイロットプロジェクト(HESC)ではオーストラリアのラトローブバレーで褐炭水素を製造、液化して運搬船で神戸空港島に運び、貯蔵するという実証試験を行っている。(2022年2月に初着桟予定)今後、大型化技術開発、商用化実証を経て2030年実運用の予定である。


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