高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第31回 高周波・アナログ半導体技術セミナー報告
       

□テーマ:「スマートハウスのエネルギーシステムの現状と今後の動向」
□日 時: 平成24年 12月 6日(木) 14:00-17:00
□場 所: 京都テルサ 西館3階 第2会議室 (京都府民総合交流プラザ内)


 今回のテーマは「スマートハウスのエネルギーシステムの現状と今後の動向」で、この分野で活躍されている3名の方々を講師にお招きして、貴重な講演をして戴いた。約30名の参加があり、またセミナー終了後の交流会にも多くの方々が参加され、講師を囲んで、熱心な意見交換が行われた。参加者同士の新たな、そしてより深い連携促進のきっかけを生み出す場となった。以下、講演の概要を報告する。
◆講演:「スマートハウスのエネルギーシステムの現状と今後の課題」
     丹羽 哲也 氏 (大阪ガス梶@エンジニアリング部 スマートエネルギーハウス推進室 室長)
 スマートハウスとはIT(情報技術)を使って家庭内のエネルギー消費が最適に制御された住宅の事である。
 最新の家庭用エネルギーシステムは、電気とガスの供給に加えて、電気と熱を併給するコージェネレーション
設備、太陽光発電設備、蓄電設備、これらすべてを制御するHEMS(Home Energy Management System)を備え、
快適性を保った上で省エネおよび電力供給力不足と停電対応が可能なシステムである。
 家庭用コージェネレーション設備として、エネファームが商品化されている。エネファームの電気出力は700W 、
新型エネファーム(SOFC)の給電と給湯を合わせた効率は90%にも達する。
 畜エネルギーシステムとして、家庭用蓄電池システム、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車の電池を
使った蓄電システム(V2H:Vehicle to Home)が将来大きく普及する可能性も紹介された。蓄電池のコスト 
ダウン、充放電時に20〜数十%のエネルギー損失が発生する事、住宅内で交流・直流変換および直流・直流変換時の
エネルギー損失などの課題が指摘された。
 HEMSの実用化例やHEMSの製造企業の例が紹介された。HEMS用の通信規格、制御の目的関数は何か、
などが課題である。
◆講演:「太陽光発電用パワーコンディショナ技術の現状と将来」
     木全 政弘 氏 (三菱電機梶@先端技術総合研究所 電力変換システム技術部 部長)
 太陽電池モジュールには発電電力が最大になる動作点があり、この動作点は太陽光強度、温度で変化する。
パワーコンディショナーは動作点の変化に追随しながら、一定の交流電圧を出力し、高周波やノイズを抑制する
装置である。
 パワーコンディショナーの回路には、マルチレベル方式(三菱電機の製品では諧調制御型方式と呼ぶ)と
2レベル方式がある。量産されている成熟したパワーデバイスを用いる場合、デバイス数が増加するが諧調制御
方式が有利で、高い変換効率で、小型・薄型のパワーコンディショナーが市販されている。変換効率は約98%である。
 低損失で高パワー密度、高耐圧が可能な最先端のパワーデバイスであるSiC-MOSFETとSiCダイオードを適用した
パワーコンディショナーの開発結果が報告された。SiCデバイスが未だ高価なので、デバイス数を少なくできる
2レベル方式を採用している。変換効率は約98%である。
 いずれの場合にも、変換効率が従来の96%程度から約98%に向上しているので、パワーコンディショナーの損失が
半減し、小型・薄型、密閉化、耐湿性能の向上が実現できている。
 パワーコンディショナーの効率は、価格、装置の大きさ、密閉化、耐湿性能などから判断すると、98%あたりが適当で
あるとの見解が示された。
 また、マルチレベル方式と2レベル方式がパワーデバイスの発展と対応しながらサイクリックに発展して行くという
技術発展の流れが紹介された。
◆講演:「家庭用蓄電装置とリチウムイオン電池技術」
      郷内 敏夫 氏 (エリーパワー株式会社 実研部 部長)
 蓄電装置は停電時のバックアップ、太陽光発電や風力発電などの不安定な発電電力を安定電力にする、ピーク
シフトや夜間電力の有効利用などに有効である。また、蓄電装置はポータブル電源も可能にする。
 各種の蓄電池の特性の比較が紹介された。リチウムイオン電池が、重量エネルギー密度、充電効率などの特性で
優れているが、コストの課題がある。
 エリ-パワー(株)は据え置き用の蓄電装置向けに、正極材料にリン酸鉄リチウムを用いた角型のリチウムイオン
電池の量産化に取り組んでいる。このタイプのリチウムイオン電池は、正極にコバルトやニッケルを用いるタイプに
比べて低価格であり、資源的制約が少ない。ただし、重量当たりの電池容量(Ah/kg)はコバルトやニッケルを
用いるタイプが160に対して、リン酸鉄タイプは130である。
 リン酸鉄タイプのリチウムイオン電池の過充電試験や釘刺試験や燃焼試験における安全性確認結果が報告された。
更に、正極活物質の熱分解温度が600℃と他のタイプに比べて300℃程度高く、より安全である事も報告された。
 リン酸鉄タイプのリチウムイオン電池の価格は、近い将来には、1/5程度に低減される可能性があると言う事が
示された。

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