高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第27回 高周波・アナログ半導体技術セミナー報告

       

□テーマ:「GaNデバイスの現状と今後の動向
□日 時: 平成23年12月6日(火) 14:00〜17:00
□場 所: 京都テルサ西館3階第2会議室


 第27回高周波・アナログ半導体技術セミナーが、平成23年12月6日京都テルサ西館3階第2会議室(京都市南区)で開催された。今回のテーマは「GaNデバイスの現状と今後の動向」で、この分野で活躍されている第一人者の方々を講師にお招きし講演していただいた。参加者は47名で、GaNの物性、SiCとの比較検討、デバイスの開発の現状、新しい結晶成長方法の紹介、パワーデバイスへの応用、特に携帯電話基地局用高周波デバイスへの応用などについて、講演、活発な討論が行われた。
 セミナー終了後の交流会にも、セミナー参加者の多くが参加し、講師を囲んで、具体的、詳細に及ぶ熱い意見交換が行われた。
 以下、その概要を報告する。
◆講演:「パワーデバイスの未来=SiCかGaNか?(株)パウデックの事例」
     山口 栄一 氏 (同志社大学大学院 技術・革新的経営専攻 教授、(株)パウデック 取締役)
 GaNはSi、SiC、ダイヤモンドなどの半導体の中でバンドギャップが大きいなど物性的にパワーや高周波用半導体への利用に大きな期待があること、わが国オリジナルの材料であり、いろいろなメーカーで青色ダイオードなどの開発が行われており、基板は住友電工が開発していること、しかし、光応用に注力され、パワーデバイスの開発は遅れているのが現状であることなどが示された。
 SiCデバイスにより送電・配電ロスのイノベーションが起き、GaNでさらにそれが進むとの期待から、パワー半導体用途では、PFC回路、PVインバーター・マイクロインバーター、産業用モーター用インバーター、UPSなどへの利用の紹介があった。
 パワーエレクトロニクスは成長産業で戦国時代であり、新規参入が容易で先ずはダイオードで事業を始めるとよいとのことである。
 SiCは元となる基板が米国クリーに独占されているのでセカンドソースが必要であり、GaNではベンチャー企業である(株)パウディックが新たにピールオフ法を開発し、新たな展開が開始したことが報告された。
 今後、この新しい技術を用い水平連携でパワーデバイスを取り組んで行くことが重要とまとめられた。
◆講演:「GaNデバイスの現状と今後の動向」
     石田 昌宏 氏 (パナソニック(株)セミコンダクター社 半導体デバイス研究センターチームリーダー)
 始めにGaNの特徴が示され、SiCなどの基板のコストが比較され、現時点で2インチで約50万円するのでは普及は無理なので、低コスト化を目指してSi基板上に結晶成長を行う技術開発が紹介された。格子定数や熱膨張係数の補正のため超格子バッファ層などをSiとGaNとの間に挟むことなどにより6インチ上のSi基板の上にGaNを成長することに成功し、低コスト化が示された。デバイスとして、ノーマリーオフ型トランジスターであるGIT(Gate Injection Transister)やNSJ(Natural Super Junction)ダイオードの低オン抵抗、大電流動作、高耐電圧のパワーデバイスが紹介された。実際の応用例としてPFC回路への応用により2%程度効率が向上することやインバーターにより99.3%の高効率モーター駆動の例が示された。他の技術として、ワンチップインバーターIC作製のためのFeイオン注入による素子分離技術やデバイス耐圧向上のための耐圧ブースト構造により約2200Vの耐圧を実現したことが示された。
◆講演:「高周波GaNHEMTデバイスの現状と今後の動向」
     長谷川 裕一 氏 (住友電工デバイスイノベーション(株)電子デバイス事業部電子デバイス開発部部長)
 始めにGaNHEMTデバイスの特長と製品化への課題が示された。性能の改善として、基板、エピ仕様、ウェーハプロセス技術の開発、GaNの特長である電流コラプスの克服が挙げられた。表面電化制御構造の導入などにより抑制し、高温における長期信頼性を確立したことが示された。また、課題として量産ウェーハプロセスの歩留まり向上、SiC基板上へのエピ品質向上などが挙げられた。住友電工での高周波の定義は1GHz〜100GHzで、GaNデバイス利用としては広帯域通信、携帯電話基地局、L帯、S帯レーダー、放送などが示された。特に最近基地局へと市場が移行し、これからも成長が期待できるとのことである。まとめとして高周波化と大電力化、新規利用としては衛星通信、C帯、X帯レーダーへの応用、マイクロ波リンクへの適用などが今後の課題として示された。

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