高周波アナログ半導体ビジネス研究会

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第21回 高周波・アナログ半導体技術セミナー報告
□テーマ:「スマートグリッドに期待される電力用半導体技術の動向」
□日 時: 平成22年9月28日(火) 14:00〜17:00
□場 所: 京都テルサ 西館3階 第2会議室


 第21回高周波・アナログ半導体技術セミナが、平成22年9月28日に京都テルサ(京都市)で開催された。今回は、「スマートグリッドに期待される電力用半導体技術の動向」のテーマで、講師には、SiC半導体の研究で世界的に著名な松波弘之氏、パワーモジュールの研究を精力的に進めておられる大阪大学の舟木剛氏及び電力用素子を開発中の電力中央研究所の土田秀一氏をお招きして開催した。
 参加者は56人で、SiCパワー半導体の広範囲の適応により、新たな産業の振興が期待できるなど明るい展望が示された。また、セミナ後の交流会には32人のご参加があり、活発な交流が行われた。
◆講演:「国家プロジェクト・SiCパワー半導体の研究開発の動向とSiCアライアンス」
     松波 弘之 氏 JSTイノベーションプラザ京都 館長 兼 SiCアライアンス 会長
 SiCパワー半導体が注目されるようになったブレーク・スルーは、講演者松波らの研究「ステップ制御エピタキシー」(1987年)である。1995年には、耐圧1.7kVのショットキーダイオードを試作し、また、CVD用量産装置も開発してきた。このような経緯をみると大学の役割は大きい。国プロも推進してきた。太陽光発電用インバータやデータセンターなどへの応用を第1世代とするならば、第2世代の2015年頃には、6インチ径SiC基板が開発され、3〜6kV級の高耐圧デバイスが出現するだろう。更に第3世代は、グリッド用耐圧6600V(13kVDC)対応のデバイスも実用化する。今年の5月に「SiCアライアンス」が設立された。大学の役割は学理を尽くし、標準化やデファクトスタンダードを作ることである。業界では、6インチ径のSiC基板開発の要望が強く、LSI用としても期待されている。
◆講演:「SiCパワーデバイスの利用とモジュール化における課題」
     舟木 剛 氏 
大阪大学大学院 工学研究科 教授
 シリコンデバイスでは適応できない領域でSiCパワーデバイスへの要求が高まっている。現在、Si-IGBTとSiC-SBDの組み合わせによるモジュールが開発(独SiCED)されているが、高温動作は困難であり、電気自動車用などに高温対応のオールSiCパワーモジュール開発の要求が強い。開発の課題は、高温に耐える鉛フリーはんだ、絶縁基板、絶縁封止材料などが必要不可欠である。絶縁基板としてはAlNなどが検討されており、絶縁封止材料としてはポリシロキサン(400℃での使用可能)などが開発されている。SiCデバイスとしては既に、SBDダイオードが製品化され、現在、DMOS、トレンチ型MOS、JFET、BJT及びIGBTなどが開発中である。SiCパワーデバイスへの期待は大きい。
◆講演:「電力用半導体素子に向けたSiC研究開発」
     土田 秀一 氏 
電力中央研究所 材料科学研究所 上席研究員
 太陽電池、風力発電、燃料電池等の導入による電力系統の制御(次世代グリッド)には、シリコン半導体では限界にきており、SiCパワー半導体の利・活用が期待されている。電力中研では、通電ロスの大幅低減が計れる(インバータ損失が1/4〜1/5)のSiCパワー半導体の開発を進めている。縦型の高速エピ炉を開発し、減圧CVD法により超高速4H-SiCエピ成長250μm/h(15Torr、基板温度1650℃)を達成した。エピ時に発生する結晶欠陥の詳細な解析を行い、またエピ層に炭素イオンを注入・アニール法の開発による大幅な点欠陥の低減により、PiNダイオードの順方向特性の改善とともに逆耐圧17.1kVの素子を開発した。現在、内閣府の最先端研究支援プログラム「低炭素社会創成に向けた炭化珪素(SiC)革新パワーエレクトロニクスの研究開発」において、次世代グリッドにおける電力安定制御などに用いる超高耐圧SiC素子の実現に向けた研究開発を進めている。

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